時間のないかたは1:58あたりからご覧ください(前半部分は鼠径床内側にヘルニアがないかの確認作業)
腹腔鏡で観察しただけでは診断できないヘルニアがあります。
ダイレクトや大腿ヘルニアも腹膜剥離を進めて初めて判明するものもあります。
そして、じつはインダイレクトすなわち内鼠径輪内部に脂肪組織があり、それが症状につながっている症例もあるのです。
いわゆるザックレスヘルニアと呼ばれているケースです。
ポイントとしては、
□ヘルニアが見当たらなくても慌てない
□通常通りの剥離を行う
□剥離したエリア(大腿裂孔や腹直筋外縁から下腹壁血管の間)の壁側を鉗子で軽く押したりつまんだりしながらヘルニアの有無を確認する
□経験上はダイレクトや大腿はごくわずかにでも腹膜側にくぼみがあるので腹膜剥離せずとも目星はつく(が、念のための前述の確認は怠らないこと)
□内鼠径輪の全周の脂肪組織をつまんで引きながら確認すると大概は精索に伴走した脂肪組織塊を発見することができる。
□この脂肪と精索をパリエタリゼーションと等しい範囲にわければ操作完了だが、脂肪の摘出はケースバイケースである
□ごくまれに脂肪肉腫のケースがあると言われているので組織検査は望ましいが、有茎ならともかく頚が太くて背外側広範に組織的連続性がある場合は困難。(一部提出でやむなしと思う)
□その場合は通常のラパヘルのメッシュ敷設範囲までの剥離にとどめ剥離した脂肪を巻き込まないように確実に壁側にメッシュを敷設する
□脂肪を広範に剥がすと出血するので、超音波凝固切開装置があれば楽
□ザックレスヘルニアを鼠径ヘルニアと扱うことについて異論が多かった時代もある
□術前CTが撮られれば幾分心の準備はできる。ただし、当院としては全例CTに必ずしも賛同ではない。本例は体表診察上典型的なヘルニア症状。
体表からヘルニアの確定診断をしたのにいざ鏡視下観察してみるとヘルニアがない!
そういう場合は大概これです。
「診察では膨隆があったため,腹腔鏡で観察した時点でどこかに脂肪の脱出があるはずと思って,色々な部位を何度か牽引して当たりを付けたのが実際です.この概念を知らないと見逃してしまう若手がいるかもしれませんので,私はしっかり教育しています.」
との星野先生のコメントです。
みなさんがんばりましょう!